オーストリア

音楽家ゆかりの地 ウィーン ベートーベン<後編>ウィーン郊外で軌跡を辿る旅

ベートーベン散歩道
もわりー

数々の音楽家が活躍した町、ウィーンでベートーベンの軌跡を辿る旅。後編ではウィーン街中から少し離れたところを訪れてみましょう。

音楽家ゆかりの地 ウィーン ベートーベン <前編>ウィーンの街中での軌跡を辿る

1 ウィーン19区 ベートーベンの家と散歩道

ベートーベンは80回近くの引っ越しをしたと言われていますが、ウィーン北部、19区のハイリゲンシュタットと呼ばれるエリアにも好んで住んでいたと言われています。

地下鉄U4に乗り、終点のハイリゲンシュタットHeiligenstadtまで行きます。そこから38Aのバスに乗って5分ほど、フェルンシュプレッヒアムトFernsprechamtで降ります。バスの進行方向へ少し歩き、右側の坂道を少し上がると、プファールプラッツPfarrpplatzと呼ばれる小さな広場のようなところに出ます。ここもかつてベートーベンが住んでいたことがある場所の一つです。現在は、「マイヤー・アム・プファールプラッツ」と呼ばれるワイン居酒屋のホイリゲになっています。このエリアでは少し奥まで歩くとブドウ畑が広がり、ワインが作られているのです。そして、ホイリゲと呼ばれるワイン居酒屋も数多く見られる場所です。

プファールプラッツには、このあたりでベートーベンが住んだ家やベートーベンの像がある場所などが記された地図があります。ベートーベンが、同じエリアで引っ越しを繰り返したことがわかります。

ここから、プロブスガッセ(Probusgasse)を歩いていくと、ベートーベンが遺書を書いたことで知られる「ハイリゲンシュタット遺書の家」があります。

ベートーベンがこのエリアに移り住むようになった理由は、音楽家にとって致命的な難聴を患い、医師にこの閑静な場所を勧められたためでした。しかし、ベートーベンの聴覚は残念ながら悪化していきます。そして、絶望したベートーベンは、1802年、32歳で遺書をしたためたのです。

家の内部はミュージアムになっており、ベートーベンが書いた遺書、ピアノや周りの風景画などが展示されています。

2017年に改装され、現在はベートーベンミュージアムと呼ばれています。

https://www.wienmuseum.at/de/standorte/beethoven-museum

またこの辺りには、ベートーベンが好んで散歩をしていた場所があり、「ベートーベンの散歩道 Beethovengang」と呼ばれています。

小川沿いのこの小径を歩きながら着想を得た曲が、「交響曲第6番田園」です。緑の木々が風に揺れ、鳥の囀りが聞こえるような曲ですね。

遺書の家から散歩道までは、徒歩10分ほどです。標識や地図がないので、地図を確認しながら歩きましょう。
ベートーベンの散歩道から少し歩くと、市電の停留所ヌスドルフNussdorfに出る。そこからDの市電で町の中心地に出ることもできます。

ワインがお好きな方は、ホテルへ戻る前に、この辺りのワイン居酒屋ホイリゲでワインとともにオーストリア料理の夕食を楽しまれてはいかがでしょうか。

2 ベートーベン墓地

一度は遺書までしたためたベートーベンですが、聴力を失ったベートーベンは、その後もピアノの振動を感じることで作曲活動を行っていきます。しかし、その後も長きに渡る闘病生活に悩まされ、1827年56歳で生涯を閉じます。病名は肝硬変と言われています。

ベートーベンが最期を過ごした部屋は、前編で紹介したパスクアラティハウスの近くにありますが、ミュージアムにはなっていないので、見学はできません。

ベートーベンの死から3日後の3月29日、家の近くの教会で葬儀が行われました。ベートーベンを慕っていたシューベルトをはじめ、多くの参列者がベートーベンの死を悲しみました。ベートーベンの棺は、葬儀の後近くのヴェーリング墓地へ埋葬されましたが、1888年ウィーンの中央墓地Zentralfreidhofへと移されました。今でもこの中央墓地に、メトロノームをかたどったベートーベンの墓地があります。

この中央墓地の32Aの区画には、シューベルト、ヨハン・シュトラウスなどウィーンで活躍した様々な音楽家が埋葬されており、音楽ファンなら是非とも訪れてみたい場所となっています。

中央墓地へは、国立オペラ座前 Karlsplatzから71番の市電に乗り、Zentralfriedhof 2.Tor で下車(約26分)するのが便利です。

3 バーデンのベートーベンハウス

1で紹介したウィーン北部の閑静なエリアのほか、ベートーベンはウィーン郊外南部の温泉保養地、バーデンでも15年にわたり夏の時期を過ごしました。ベートーベンはバーデンで数々の場所に宿泊していますが、その中でも1821年から1823年の夏、温泉で保養するために3年連続で投宿した場所が、現在ベートーベンハウス・バーデンとして公開されています。この家で、ベートーベンは1823年、最後の交響曲である「交響曲第9番」の作曲に取り組んでおり、ここは「第9の家」とも言われているのです。

当時のベートーベンの暮らしが再現されている部屋やピアノが展示されています。また、ここではイベントやコンサートなども開催されています。

https://www.beethovenhaus-baden.at

バーデンへは、ウィーンの国立オペラ座前からバーデン線Badner Bahnで1時間ほどで行くことができます。

バーデンにはベートーベンも散歩を楽しんだと言われている緑が美しい公園クーアパークKurparkがあります。他にも、水着を着てプールを楽しめる温泉施設レーマーテルメ・バーデンRömertherme Badenなどがあり、ウィーンの郊外観光地としておすすめの場所です。

最後にもう一つ、ウィーンを訪れる音楽ファンの方におすすめのミュージアムをご紹介します。「音楽の家 Haus der Musik」と呼ばれるところです。サウンドやバーチャルなどの技術を駆使した音楽に関するユニークなディスプレイ、ウィーンフィルに関する展示などがあるほか、おすすめは4階(3.Etage)にある偉大なる音楽家のコーナーです。ベートーベン、モーツアルトほか、オーストリアで活躍した偉大な音楽家が紹介されています。それぞれの作曲家の詳しい説明のほか、音楽も聞くことができ、どっぷりと音楽の世界に浸れます。時間があれば是非ゆっくり訪れてみてください。

https://www.hausdermusik.com/en/museum/

海外でもスマホが使えると、場所探しにも便利ですね。

ABOUT ME
もわりー
もわりー
日本→ウィーン15年→現在ロンドン在住です。
書くこと・なにかをつくり出すことが好きです。

記事を読んでいただいた方をステキな旅へと案内できたら、そんな思いで書いていきます。

どうぞよろしくお願いします。
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