旅がもっと面白くなる! グラーツってどんなところ?! オーストリア編3
オーストリア観光で訪れる町といえば、ウィーンとザルツブルグをあげる方が多いと思われます。はい、どちらも何度訪れても楽しめる町ですよね。
今回は、そのウィーンから列車で3時間弱で行ける町、グラーツをご紹介します。
え、グラーツって何があるの?
そう思われる方のために、まずはグラーツの魅力を端的にお話しましょう。グラーツは、世界遺産にも登録されており、歴史的な建造物からモダンな建物まで、見どころは多岐にわたり、ステキな街並みを見渡せる展望スポットまであるのです。
ウィーンから日帰りで訪れても良いですし、宿泊してゆっくり見どころを味わうこともお勧めです。
では、さっそくグラーツ観光に出かけましょう!
1 ウィーンから列車に乗ってグラーツへ
今回は、ウィーンから列車に乗ってグラーツに向かいましょう。
ウィーンの中央駅 (Hauptbahnhof)を出発してヴィエナーノイシュタットの駅を通過したあたりから、車窓に緑の景色が広がってきます。ウィーンからグラーツ行きの直通列車では止まりませんが、グログニッツという駅から、ゼンメリング駅を通ってミュルツツーシュラーグ駅までの間は、ゼメリング鉄道と呼ばれる区間で、ヨーロッパではじめて開通した山岳鉄道と言われているのです。
急勾配の山間部にかかる石造りの高架橋が映える景色は、世界遺産にも登録されています。1848年から1854年まで、ゼメリング峠を切り開いて鉄道を敷き、カーブや急傾斜など当時の最新技術を駆使し、完成するまで6年もの歳月が費やされたのです。
見渡す限り緑の木々や山々が連なる景色を、是非ご堪能ください。
グラーツの駅についたら、ちょっと驚くような絵が描かれているので、こちらも是非お見逃しなく!
天井から壁まで恐竜の骨のように描かれた赤と銀色の模様は、2003年にグラーツが欧州文化都市に指定されていた時に描かれたものです。文化都市の間1年だけのつもりだったようですが、好評だったので残されているそうです。
2 グラーツ中央広場と歴史地区
グラーツの駅からは、路面電車を利用しましょう。乗り降り自由な24時間有効なチケットを購入しておくと便利ですね。
まずは、ハウプトプラッツ (Hauptplatz)で降ります。
*ハウプトプラッツ Hauptplatz
ここは中央広場、町の中心地になるので、街歩きをする際に目印にするといいですね。
白い立派な建物は市庁舎、その隣にはに美しいルネッサンス様式の州庁舎があります。白壁の美しいアーチ型の窓が連なる州庁舎のアーケードの中庭も是非立ち寄ってくださいね。
広場の中央には噴水があり、大きな像が立っています。「シュタイヤーマルクの王子」と呼ばれたヨハン大公の像です。
ヨハン大公は、1782年ハプスブルク家のトスカーナ大公レオポルト2世の13人目の子としてフィレンツェで生まれ、進歩的な考え方を持つ父を尊敬し、伸び伸びと育ちました。やがて父レオポルト2世は兄ヨーゼフ2世の死を受けて皇帝の座につきますが、レオポルトもその後まもなく亡くなります。そして長男のフランツが後を継ぎます。華やかな宮廷文化よりも自然を愛するヨハンは、シュタイヤーマルク州の産業、農業、教育、文化の発展に大きく貢献したのです。
レオポルト2世についてご興味がある方は、是非こちらをご覧ください。
知ると面白いハプスブルク家 11) ヨーゼフ2世とレオポルド2世兄弟 マリアテレジアの息子たち
グラーツにはこのヨハン大公の名前がつけられたホテルもあるのですよ。
市庁舎の向かいには、”絵が描かれた家”という意味の”ゲマルテス ハウス”という建物もあります。1742年バロックの巨匠ヨハン・マイヤーがギリシャやローマの神話の神々を描いたと言われています。壁一面に描かれたフレスコ画としては、オーストリアで最大の大きさを誇ります。
スワロフスキーショップの横の通りシュポアガッセを進み、右側2本目の通りホーフガッセに入りましょう。ブルグ(王宮)とドーム、マウソレウムがあります。
*ブルク(王宮)、ドーム、マウソレウム
ブルグ(王宮)は、かつてのハプスブルク家の居城でした。
15世紀ハプスブルク家が兄弟でオーストリアを分割統治していた際、シュタイヤーマルクを領有していたフリードリヒ3世によってこのブルクが建てられました。建物は現在ほとんど残っていませんが、二重螺旋階段と言われる面白い階段が残されています。
螺旋階段の途中から左右に分かれ、それぞれに回ると1箇所で交わり、それからまた左右に分かれるという珍しい作りです。
この階段は、フリードリヒ3世の息子、マキシミリアン1世によってつくられたそうです。マキシミリアン1世は、ハプスブルク家の中でも優秀な騎士として知られています。
またこのブルグには、フリードリヒ3世がさまざまな場所に残した暗号のような文字、A.E.I.O.U (ア・エ・イ・オ・ウ)が刻まれた壁も残されています。この文字の解読研究は現在でも行われており、諸説ありますが、「オーストリアは全世界を支配する」という意味なのではという説が有力です。
私は以前グラーツでこのブルクを見た時に、なぜグラーツに王宮があるのだろうかと疑問に思いました。オーストリアの中心地が、日本の京都のようにかつてはウィーンではなくグラーツにあったのでしょうか? と気になってしまいました。そして、それからハプスブルク家について詳しく知りたくなったのです。
グラーツがあるシュタイヤーマルク州は、ハプスブルク家による分割統治時代の分家の住まいだったのです。
詳しくは、こちらの記事に書いてありますので、是非のぞいてみてください。
知ると面白いハプスブルク家 2)フリードリヒ3世
このブルクの向かいには、ドームがあります。ハプスブルク家のフリードリヒ3世が、宮廷教会として建てました。
その隣には、ブルー屋根のマウソレウムと呼ばれる霊廟があります。1637年に亡くなったハプスブルク家の皇帝フェルディナンド2世によって造られ、埋葬されています。
3 シュロスベルグ 時計塔
グラーツ観光で外せない場所は、なんといってもシュロスベルクSchlossberg でしょう。
時計塔があることで有名な城山となっており、町の美しい眺望も楽しめます。
城山へのアクセスは、階段、リフトSchlossberglift、ケーブルカーSchlossbergbahnがあります。
個人的には、ケーブルカーで上り、リフトで降りる、あるいは元気があれば階段で下ることをお勧めします。
勾配を斜めに上がっていくケーブルカーからの眺めを楽しんでいると、あっという間に山頂に着きます。ケーブルカーを降りると、下から見えていたはずの時計塔は見えませんが、この城山はかなり広いのです。のんびり歩いて時計塔を目指しましょう。
シュロスベルグにはレストランもあるので、ここでランチを食べることもできますよ。
この城山は、15世紀中頃に城塞として建てられました。かなり強固に造られていたため、ナポレオンが攻めて来たときも破壊されなかったのです。しかしその後、ナポレオンがウィーンを占領すると、グラーツもナポレオンの軍に降伏し、城塞は取り壊されてしまいました。けれどその際に、鐘楼と昔から町のシンボルとして慕われてきた時計塔は守りたいという市民の強い気持ちがあり、市民が買い取る形で取り壊さず、今も残っているのだそうです。
グラーツの時計塔は、四方向すべてに時計がついていることが特徴です。そして、時間を指す針が、分を示す針より長くなっているのです。もともと時計が作られた時には分単位の細かい時間を示す必要がなく時間の針だけだったのです。その後、分を示す針もつけられることになったのですが、すでに時間の針が長かったので、それ以上長く作ることができず、分を指す方が短くなってしまったのだそうです。
このシュロスベルグから是非グラーツの街を見渡してください。
赤茶色の煉瓦造りの屋根の家並みは、グラーツらしい美しい景観です。
ここからムーア川にかかる橋と、楕円形のムーアインゼルも見つけてくださいね。
実際に橋を渡って歩いていくことができます。ムーアインゼルにはカフェもあるので、そこで一休みしてもいいですね。夜のライトアップもきれいですよ。
さらにムーア川沿いを見てみると、恐竜の足のようなゴツゴツしたユニークな建物が見えますよね? クンストハウスという建物です。近現代美術の展示室として、常設展示は行わず、テーマに沿って特別展が行われています。
ムーアインゼルとクンストハウスは、グラーツが欧州文化都市に選ばれた2003年に作られ、それ以後グラーツのランドマークとして大切な存在になっているのです。
さて、元気がある方はジグザグになっている260段の階段を歩いておりましょう! 途中に庭園もあるので、ゆっくり景色を満喫してください。
早く降りたい方は、リフトをご利用いただけます。
リフトで下に着いた後、ぜひ後ろを振り返ってみてくださいね。階段の美しい景色が見えますよ。
4 エッゲンベルグ城
お時間に余裕がある方は、トラムに乗って15分ほどのところにあるエッゲンベルグ城へも行ってみましょう。
ブルクの近くにあった霊廟を建てたフェルディナンド2世の重臣だったハンス・ウルリッヒ・フォン・エッゲンベルグ公爵によって17世紀に建てられたお城です。
時空間をテーマに作られており、4つの塔が四季を、12の門が12ヶ月を、365の窓が1年の日数を、24部屋の客室は24時間を表していると言われています。
建物内部の天井画には神話や聖書の登場人物が描かれており、人間のあるべき姿を語りかけているそうです。
またこのお城の見どころの一つに、日本人としてうれしい展示があります。
豊臣秀吉政権下で栄えた大阪城を中心とする城下町の屏風絵を見ることができるのです。
16世紀半ば頃からヨーロッパの商人が日本を訪れるようになりますが、この絵はエッゲンベルグ城の領主がオランダの商人から購入したのではないかと言われています。当初8曲がりの屏風絵だったものを8枚の絵に解体し、部屋の修復をする際に壁に1枚ずつはめこみ、今日まで保存されています。大阪城はもちろん、町の人たちの祭りや遊び、茶室や商売の様子など大阪が繁栄していた様子を見ることができる、非常に興味深い展示です。
エッゲンベルグ城の美しい庭園では、放し飼いにされているクジャクの姿を見ることもできるのですよ。
グラーツの観光を楽しんだあとは、お土産も忘れずに購入しましょう。
ここではかぼちゃの種オイル (Kürbiskernöl )が名産です。香ばしいナッツの香りがするオイルなので、サラダにかけてドレッシングにしたり、アイスクリームにかけても美味しいですよ。
また、グラーツでは毎年6月から7月にかけてシュティリアルテと呼ばれる音楽祭が開かれます。グラーツ出身の音楽家ニコラス・アーノンクールの音楽祭として始まり、2016年アーノンクールの死後も開催されています。ヘルムート・リスト・ホールやエッゲンベルグ城などが会場になっています。夏のグラーツ観光の際は、是非コンサートも一緒に楽しまれてはいかがでしょうか?
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