2026年ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート ー 拍手の嵐で年が明けました
1月1日あたらしい年の始まりの日、皆さんはどうやって過ごされましたか?
私は、今年もウィーン・フィルのニューイヤーコンサートをテレビで見て、新年をスタートさせました。
このコンサートは、ウィーンでは毎年11:15から、日本では夜の19:15に始まりますね。
英国時間では、ウィーンから1時間早く10:15からスタートします。
大晦日は夜更かしをしてしまうので、朝はゆっくりまずテレビをつけて、ニューイヤーコンサートを見ることにしています。
そして、今年はとても衝撃を受けました。
本当に素晴らしかったのですよ、このニューイヤーコンサート。
新年の始まりにふさわしく、とても前向きな気持ちになれたのです。
私は音楽の専門家ではありませんが、今回は2026年のこのニューイヤーコンサートについて、個人的なまとめを記してみたいと思います。
1 2026年ニューイヤーコンサート、どのように素晴らしかったのでしょう?
今年の指揮者は、ヤニック・ネゼ=セガン Yannick Nezet-Sguin。
カナダ出身の方で、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートを指揮するのは今年が初めてでした。
私はこれまでこの方に馴染みがなく、どのようなコンサートになるのかまったく想像もしておりませんでした。そして、気づいたら演奏に引き込まれていたのです。
ネゼ=セガン氏は、楽譜を置く譜面台も設置せず、身体全体を動かして指揮をされていました。
1)5曲の初演と楽しい演出
2026年のニューイヤーコンサートでは、初めて演奏された曲は5曲あったそうです。
演奏が始まってさっそく、2曲目・3曲目・4曲目と初めての曲が続きました。
そして3曲目に演奏された、ヨーゼフ・ランナー作曲の「マラプー・ギャロップ」では、なんと、ウィーンフィルの楽団員の方々が演奏しながら一斉に掛け声のような歌声を交えたのです。
皆さまそれはそれは楽しそうで、こちらもつい笑顔がこぼれてしまいました。
30分の幕間を挟んだ第2部でも、ステキな演出が続きます。
女性作曲家の作品も2曲演奏されました。
ポルカ「セイレーンの歌」を作曲したジョセフィーネ・ヴァインリッヒは、かつて女性のみのオーケストラを結成した人物だそうです。
昨年からこのニューイヤーコンサートで、女性作曲家の曲が取り上げられています。そもそもウィーン・フィル楽団は男性のみが入団していましたが、今ではこのニュイヤーコンサートのステージでも、女性のミュージシャンの姿がふつうに見られるようになりました。
19世紀後半に、初めて女性のオーケストラを結成した人物により作られた曲が、こうして2026年の新年、男女混合のオーケストラにより演奏されたということ、感慨深いです。

この曲の次には、ヨハン・シュトラウスの「外交官ポルカ」が演奏され、ウィーンのホーフブルクで披露されたバレエの映像が映し出されました。
ここでもまた、おやっと思える演出がありました。
ここで登場するダンサーは、女性たちを中心に、外交官の装いなのかパンツスーツに身を包み、忙しく働く様子を演じながら華麗な踊りを披露してくれたのです。
2人目の女性作曲家、アフリカ系アメリカ人のフローレンス・プライスの「虹のワルツ」が演奏されると、続いて今度はまたガラッと趣の変わった曲になりました。
「コペンハーゲンの蒸気機関車ギャロップ」では、パーカッションの男性何人かが駅員に扮してホイッスルなどを奏で、指揮者のネゼ=セガン氏も自ら駅員の演出をし、信号を出したり、ホイッスルを吹いたりと楽しいステージとなりました。
後半は、ヨハン・シュトラウスの聞き慣れた「南国のバラ」を、バレエダンサーの華麗な映像と共に楽しみ、ほっとしたのもつかの間、「エジプト行進曲」では再び楽団員の合唱も交え、迫力のある演奏に魅了されました。
2)平和を願う想い
アンコール前の最後の曲は、ヨーゼフ・シュトラウスの「平和のシュロの葉」、1866年オーストリアがプロイセンに負けた戦いの後にできた曲でした。
そして、アンコールの2番目となる定番「美くしき青きドナウ」を演奏する前には、ネゼ=セガン氏の母国語であるフランス語と英語で、“kindness 優しさ”の大切さを話し、優しさを持って人々の平和、国々の平和を願うスピーチが行われました。
音楽は世界中を一つしてくれる、そんな平和を願う思いが込められた演奏に、スタンディングオベーション、拍手喝采!
観客のみんなが、そしてきっとテレビでライブ中継を見ていた人たちも、このコンサートを楽しんだあかしとなるような拍手の嵐が起こりました。

3)「ラデツキー行進曲」でのサプライズ
いよいよアンコール最後の曲「ラデツキー行進曲」を残すのみとなりました。
そこでまた、最高の驚きの演出があったのです。
指揮者のネゼ=セガン氏が、なんと観客席の通路に現れ、そこから観客に向かって指揮をはじめたのです。
この「ラデツキー行進曲」は、観客が手拍子をしながら一緒に楽しむ曲ですが、その手拍子の強弱を指揮者が観客に向かって指揮することは定番でした。しかし、実際に観客席の側に立って、指揮を行う人を初めて見ました。
客席にいた人たちは、どれだけ笑顔になり、夢中で拍手をしていたことでしょう。
2026年のニューイヤーコンサートを、ORFオーストリア国営放送の記事では、”革新への勇気と、偉大な伝統を意図的に取り入れる敬意”と表現していました。
ドイツ語の音楽ブログサイトklassik-begeistert では、このコンサートの後、例になくたくさんの数の喜びと感動を伝えるコメントが寄せられたということです。
2 ヤニック・ネゼ=セガンはどんな指揮者?
1975年カナダのモントリオールで生まれ、10歳の頃にはオーケストラの指揮者を目指していたそうです。
ウィーン・フィルのホームページに記載されている経歴を見てみましょう。
2012年からフィラデルフィア管弦楽団の音楽監督
2018年からニューヨーク・メトロポリタン歌劇場の音楽監督兼務
25年にわたり、モントリオール・メトロポリタン管弦楽団の主席指揮者
2008年から2018年 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団の主席指揮者を務め、同楽団の名誉指揮者の称号を獲得
ヨーロッパ室内管弦楽団の名誉会員
アメリカ・カナダを中心に活動をはじめ、ヨーロッパでも活躍されていますが、気になるところはウィーン・フィル楽団との共演です。
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との共演は、2010年ザルツブルグで毎年モーツアルトの誕生日1月27日にあわせて開催される音楽祭、モーツアルト週間が初めてだったようです。
それ以来、定期的にウィーン・ザルツブルグで共演をしていますが、注目されたコンサートは、2023年夏 シェーンブルン宮殿で行われるウィーンフィル サマーコンサートでした。このコンサートは毎年6月にシェーンブルン宮殿の屋外で行われるウィーン・フィルによる野外コンサートで、無料で楽しむことができるのです。同時にテレビでも放送されます。
そうして徐々にウィーン・フィルとの関係性を築いてきたネゼ=セガン氏は、2026年の新年、初めてニューイヤーコンサートで登壇することとなったのですね。
ウィーン・フィル以外にも、ヨーロッパのさまざまなオーケストラ、ベルリン・フィル、バイエルン放送交響楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団などとの共演も行っているようです。
3 ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート見どころ
さて、このネゼ=セガン氏指揮によるウィーン・フィルの演奏が素晴らしかったことにくわえて、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートのほかの見どころも少しご紹介します。
1)フラワーアレンジメント
コンサート会場である楽友協会の黄金の間は、たくさんの美しい花々の装飾が施されます。
花飾りは、2015年からウィーン・フィルとウィーン市営庭園が協力してデザインしているとのことです。
黄金の間をたくさんの花で埋め尽くすために、オーストリアの園芸家、お花屋さんたちが力を合わせ、豊富な経験と専門知識を駆使して、12月27日から装飾に取り組んでいるようです。
2)バレエの演出
演奏中、テレビ放送ではバレエダンサーの演出が流れることがあります。
このバレエは、ウィーン国立バレエ団によるパフォーマンスで、振り付けや衣装にも注目されます。
2026年は、フランクフルトとハンブルグの元芸術監督であるアメリカ人ダンサー、ジョン・ノイマイヤーによる振り付けと、スイスの女性向け高級ファッションブランド ”アクリス” のクリエイティブ・ディレクター、アルベルト・クリームラーによるデザインのコスチュームでした。
「外交官ポルカ」と「南国のバラ」の演奏で、美しいバレエを楽しむことができました。
3)幕間30分間に流れる映像
実際に会場に足を運んでコンサートを楽しめなくても、テレビならではの楽しみ方があります。その一つに、幕間で流れる約30分間の映像です。
毎年音楽と共に、その年にちなんだテーマでストーリー性のある映像が流れます。
2026年のテーマは、こちらでした。
『芸術の魔法 ー アルベルティーナコレクション250年』
” Der Zauber der Kunst – 250 Jahre Sammlung Albertina “
ウィーンの国立オペラ座の向かい側にある、アルベルティーナ美術館のコレクション250年を祝して作成されたストーリーでした。

アルベルティーナ美術館閉館後、警備員が館内を回り、清掃員が音楽を聞きながら作業を始めると、そこにある絵が動き出し、音楽と共に絵の中の世界へと入っていくところから始まりました。
アルベルティーナコレクションの絵画、スケッチや写真をテーマに、睡蓮が咲くモネの世界や、古き良きウィーンのカフェの様子、シュテファン寺院近くのウィーンの建物などが美しい音楽に合わせてストーリーを刻んでいきます。
オーストリアらしい魅力あふれる映像に、かつてスケッチや写真に残された美しい景観そのものに入り込んで、一緒に旅をしているような気持ちを味わえました。

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ニューイヤーコンサートは、世界150カ国以上でテレビ・ストリーミング配信されています。
日本でもNHK ONEなどで配信があったようです。
毎年欠かさずニューイヤーコンサートを楽しまれている方々の中には、2026年の演出が満足ではなかった方もいらっしゃるようですが、私は、観客の方々にも、楽団の方々にもあふれる笑顔を見て、とても素晴らしい時間が流れたコンサートであったと思いました。
2026年皆さまにとってステキな1年となりますように。

