ウィーンでしか味わえない、クラシカルなカフェを訪れよう!
ウィーンはカフェが有名なことはご存知ですか?
あー、そうなんですか。
でも、カフェってどこの町にもありますよね、って思った方はいませんか?!
はい、カフェはどこの町にもあります。
けれど、ウィーンのカフェは、どこの町にもあるようなカフェではなく、ウィーンでしか味わうことのできない、独特な雰囲気の特別なカフェなのです。
今回は、ウィーンのカフェ文化について一緒に見ていきましょう。
1 ウィーンのカフェはなにが特別なの?
”カフェ”という言葉が世界共通語なので、特別なカフェと言われても、あまりピンとこないのではないでしょうか。
というのも、このことは私自身が今になって実感していることなのです。
私はウィーンに15年ほど住んだ後、ロンドンに移住しました。
そして、離れてみて改めて気づいたのです。あのウィーンのカフェは、特別だったのだと。
ウィーンで生活していた頃は、当たり前のようにカフェに入り、コーヒーとケーキを楽しみながら友人とおしゃべりをしたり、朝食を食べたり、食事をしたりしたものです。
でもロンドンでは、同じような時間の過ごし方ができないのです。もちろん、ロンドンにもカフェはありますし、同じように友人とお話をするときは、カフェに入ってコーヒーを飲みながら過ごします。けれど、それは、いわゆるチェーン系のコーヒーショップが主な場所となっています。ウィーンの時のように、お店独自の雰囲気から行きたいカフェを選び、ケーキも一緒に楽しみながらくつろぐということとは、少し違うのです。
ウィーンにカフェが多く広まったのは、19世紀だと言われています。そして、150年以上もの年月が流れた今でも、その頃に創業したカフェの多くが、ウィーンの日常生活にそのまま溶け込み、ウィーンで生活する人々の重要な場所となっているのです。
宮殿や貴族のお部屋に入り込んでしまったかのような広々としたカフェ、大理石のテーブル、きちんした服装の”Ober オーバー” と呼ばれる男性のウェイターさんや、黒服に白いエプロン姿のウェイトレスさんがいるカフェ。けれど、そこは決して萎縮してしまうような場所ではなく、誰もが気軽に入れる場所で、好きなものを飲んで、好きなように時間を過ごせる場所なのです。
ウィーンでカフェが始まって以来ずっと、カフェは第2のリビングルームと言われてきたように、誰もがリラックスしてくつろげる場所であるのです。
そんなウィーンのカフェ文化は、2011年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。
では、ここで少し、ウィーンにこのようなカフェ文化が広まった歴史をのぞいてみましょう。

2 ウィーンのカフェ文化の始まり
ウィーンのカフェ文化の始まりは、17世紀終わりまでさかのぼります。
ハプスブルク家の皇帝レオポルド1世の時代、カラ・ムスタファ率いる東のオスマン帝国がウィーンまで侵攻し、1683年第2次ウィーン包囲が起こりました。レオポルド1世は、キリスト教国に援軍を頼み、そこで召集されたポーランド国王ヤン3世の軍が、郊外のカーレンベルグの丘からウィーンに侵入し、オスマン軍を撃退しました。
その際、オスマントルコ軍は、コーヒー豆が入った袋を置き忘れていったのです。
まだコーヒー豆の実態を知らなかったウィーンの人たちでしたが、ひとりその価値を知るものがいました。それは、ポーランド軍に所属していたと言われるコルシツキーという名の男でした。彼は以前オスマン帝国と関わったことがあり、コーヒーを知っていたのです。コルシツキーは、そのコーヒー豆を用いて、1683年ウィーンで初めてコーヒーハウスを開いたと言われています。
しかし、ウィーンで正式に初めてコーヒーハウスが誕生したと記録に残されているのは、1685年アルメニアの商人ヨハネス・テオダットだという説もあります。
テオダットはオスマン帝国へ滞在したことがあり、レオポルド1世から、コーヒーを飲料として販売する特権を与えられ、ウィーン初のコーヒーハウスを開店したようです。
レオポルト1世の時代のお話、ご興味があれば下記も是非ご参照ください。
この時点で、ヨーロッパではすでに、ベネチア、ロンドン、パリなどでコーヒーを提供するコーヒーハウスは誕生していました。
ウィーンではその後、コーヒー文化が広く発展していきました。
そして、19世紀には150以上ものカフェがのきを連ね、社会の中心となっていました。
政治家、商人、小説家、芸術家などこぞってカフェに集い、カフェはビジネスや文化の発展の場となっていったのです。
心理学者のフロイト、芸術家のクリムトやエゴン・シーレ、作家のシュニッツラーなどが訪れていたカフェとして、今でも名を馳せているところも多くあります。
また、ウィーンのカフェには外のテラス席も人気ですが、この”シャニガルテン”と呼ばれるテラス席も、19世紀初頭から始まりました。そして、それまで男性だけが利用することができたカフェも、シャニガルテンで女性も利用できるようになり、その後、カフェは男性だけの場所ではなくなってきたのです。

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では、実際にウィーンのクラシカルなカフェをいくつか見ていきましょう。
3 ウィーンのクラシカルなカフェ
急速に時代が変化している今日、ウィーンでも、モダンなスタイルのカフェも次々と登場しています。それでも、150年ほどの歴史を維持し、クラシカルな趣を残すカフェもまだ多く残されているのです。
カフェの名を挙げていけば、たくさん出てきますが、ここでは4つ紹介します。
1)カフェ ツェントラル(セントラル) Cafe Central
ウィーンの王宮 ホーフブルクHofburgの近くのヘレンガッセHerrengasseにある、1876年創業のカフェ。建物自体は1850年〜1860年にかけてネオ・ルネッサンス様式で建てられ、高いアーチ型の天井や大理石の柱などが印象的な、とても美しい建物です。
当時、ヨーロッパ中の新聞や雑誌を閲覧できる場所として知られており、知識人が集う場所でもありました。常連客には、建築家のアドルフ・ロース、作家のホーフマンスタールやシュニッツラー、心理学者のジグムンド・フロイトなどがいたそうです。
中でも、作家ペーター・アルテンベルクは、大半の時間をこのカフェ・ツェントラルで過ごし、郵便の住所もこのカフェにしていたというお話も残されています。それほどまでにこのカフェを愛していたペーター・アルテンベルクは、今でも像となって入り口に座っているので挨拶してみましょう!
ここは、コーヒー、紅茶や美味しいケーキ類の他、オーストリア料理のお食事も楽しむことができます。オリジナルのケーキ、”カフェ・セントラル・トルテ”もあるのですよ。
このカフェは観光客にも非常に人気の場所なので、並んで待つこともしばしばあります。
カフェ・ツェントラルのウェブサイトはこちらです。
2026年3月から2026年の秋・冬まで、改装のためにクローズしています。

2)カフェ シュヴァルツェンベルク Cafe Schwarzenberg
ウィーンの環状道路リンク通りに面した場所、国立オペラ座からも徒歩5分ほどのところにあります。
1861年この地に初めてカフェが開業し、その後1902年から”カフェ シュヴァルツェンベルク”という名前になりました。
高い天井、趣のあるテーブルと椅子は、クラシカルなウィーンカフェの雰囲気を満喫できます。また、リンク通りに面した窓側の席は、隣の席との間に厚い壁があり、セミ個室のような雰囲気で落ち着けるのです。
夏になると、入り口にシャニガルテンと呼ばれるテラス席が設置され、ここもいつもたくさんの人で賑わいます。
ピアノやジャズのライブを楽しめる日もあるようです。
カフェ・シュヴァルツェンベルクのウェブサイトはこちらです

3)カフェ ザッハー Cafe Sacher
ウィーンの町の中心地にある最高級ホテル ザッハーのカフェです。
はい、あの “ザッハトルテ” で有名なカフェです。
ウィーンに行ったら”カフェ”、というイメージがない方でも、ウィーンに行ったら”ザッハトルテ”を食べようと思っている方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。

カフェザッハーの写真ではありません
“ザッハトルテ”はそもそも、1832年フランツ・ザッハーがまだ16歳の見習いの時に初めて作られたケーキでした。宰相メッテルニヒより、大切な夕食の席で特別なデザートを用意して欲しいとの依頼が入った際、料理長が体調を崩していたため、代わりに見習いのフランツ・ザッハーがアプリコットジャムとホイップクリームを使ったチョコレートケーキを作ったことが始まりでした。
その後、フランツ・ザッハーの息子エデュアルド・ザッハーが、そのレシピを使ってザッハートルテを作ります。それから、エデュアルドは1876年国立オペラ座の真向かいに”ホテル ザッハー’を開業したのです。そして、そのホテルの名物ケーキとして、すぐに”ザッハトルテ”が世に出るようになったということです。
今でもウィーンを訪れる世界中の人たちが、この”ザッハトルテ”を目当てにホテル ザッハーのカフェに列を作っています。
赤を基調としたホテルザッハーのカフェは、絨毯や壁に赤色が取り入れられた重厚な雰囲気です。
そして、そこでいただくザッハートルテは、しっかりしたチョコレートのコーティングとアプリコットジャムのコンビネーションが口の中で溶け、贅沢な味を堪能できます。ケーキの横に添えられたホイップクリームと一緒にいただくと、不思議なことにチョコレートケーキだけでいただくよりも甘さが緩和されるようで、絶妙なおいしさになります。
カフェザッハーは、このザッハトルテ以外にも、スイーツやお食事も楽しめます。
ウィーンだけではなく、ザルツブルグ、インスブルックにも拡大しているホテルザッハーは、スイス、イタリアなどさまざまな町にポップアップカフェとしも登場しているようです。2026年は創業150周年を迎え、春先にはロンドンのレンズバラホテルThe Lanesboroughでもザッハーのカフェを楽しむことができたようです。
カフェザッハーのホームページはこちらです。
ザッハーには世界中の観光客が訪れるため、長時間並ぶこともあります。
ザッハトルテはお土産としても大変人気があります。
木箱に入った丸いトルテのほか、一口サイズの四角いザッハトルテのセットもありますよ。

ポップアップカフェの情報は、こちらです。
4)カフェ デーメル Cafe Demel
王宮 Hofburgの入り口ミヒャエラ広場に続くコールマルクト通りにある、ハプスブルグ家の王室御用達の称号を持つカフェです。
はじまりは、1786年のルートヴィヒ・デーネがお菓子屋を開いたところまで遡ります。
その後、k.u.k. Hofzuckerbäckerei(カー・ウント・カー・ホーフツッカバッケライ)の称号を手に入れ、フランツ・ヨーゼフ皇帝や皇妃エリザベート(シシー)も好んでデーメルのお菓子を食べていたと言われています。
k.u.k.とは、フランツ・ヨーゼフ皇帝の時代、ハンガリーに自立した政府・議会を認め、オーストリア=ハンガリー二重帝国となった際、国家機関に公式に認められたものに冠された言葉で、k.u.k. Hofzuckerbäckerei(カー・ウント・カー・ホーフツッカバッケライは、「ハプスブルク家の宮廷(帝室・王室)に商品を納めることを許された、最高格の菓子店」という位置付けになります。
デーメルは、カフェのショーウィンドウのディスプレイが凝っていることでも知られています。シーズンごとに変わる、見事なお菓子の人形や飾りなどを楽しむことができます。

イースターエッグの飾り
また、デーメルはカフェだけではなくお菓子屋さんとしても有名で、かわいいパッケージに入ったチョコレートやクッキーなども人気です。
シシーが好んで食べていたと言われているお砂糖で加工されたスミレのお菓子も、試してみたいですね。
日本でもデーメルのお菓子は販売されていますね。
ザッハーカフェとデーメルの争い
ちょっとおまけのお話です。
カフェ ザッハーとデーメルには、実は因縁があるのです。
ホテルザッハーを開業し、ザッハトルテを有名にしたエデュアルド・ザッハーは、父親が見習いの時に作ったチョコレートケーキを作り直してからホテルザッハーを開業し、ザッハトルテが誕生しました。
そして、そのエデュアルドが、ザッハートルテとして作り直しをした場所が、彼が見習いとして働いていた”カフェ デーメル”であり、その時すでにオリジナルとしてそのケーキが提供されていたそうなのです。
さらにエデュアルドの死後、財政難に陥った息子が、ザッハトルテの販売権をデーメルに売却してしまいます。
これらのことは、戦後になって大きな火種となりました。
1950年代、”ザッハトルテ”の”オリジナル”を名乗る権限を、両カフェが主張して法的に争いになったのです。
結果、1965年にアプリコットジャムを入れるスポンジの層に違いを出すことで合意し、それぞれ”オリジナル ザッハートルテ’”と”デーメル ザッハトルテ”という名で販売されることになったと言うことです。
実際、このアプリコットジャムの入れ方の違いで、味も違うのですよね。
どちらのザッハトルテが好きかは、意見が分かれるところです。
4 ウィーンならではのコーヒー
ウィーンのクラシカルなカフェに入って、メニューを開くと、コーヒーの種類の多さに驚きます。気になるコーヒーを注文して試してみることも良いですが、ここでもいくつか紹介します。
ウィーンでは、シルバーのお盆の上に載せられ、コップに入った水道水と一緒にサーブされるスタイルが一般的です。
1)メランジェ Melange
ウィーンのコーヒーと言えば、メランジェなのです!
カフェによっては、”ウィーナー・メランジェ Wiener Melange”という名前になっています。
コーヒーに、泡立てたミルクを注いで作ります。見た目はカプチーノと似ています。
では、メランジェとカプチーノの違いは何かと言いますと・・・
コーヒーの濃さが違う、ミルクの泡立て方が違う、などと言われていますが、メランジェの方がカプチーノよりも少しマイルドな味わいです。

2)アインシュペンナー Einspänner
ウィーンと言えば、”ウィンナーコーヒー”が有名なんじゃないですか? と思われる方もいらっしゃるでしょう。けれど、”ウィンナーコーヒー”は日本で使われている呼び方で、実際ウィーンにそのような名称のコーヒーはありません。
アインシュペンナーは、日本のウィンナーコーヒーのように、ホイップクリームがのったコーヒーです。
馴染みのない言葉ですが、spänner(シュペンナー)は引馬車を意味しています。ドイツ語の数字の1を表すアインEinが前につくと、一頭立ての馬車、数字の2Zweiがつくと二頭立ての馬車という意味です。
19世紀には一頭立て馬車が主流で、御者が片手で手綱を持ち、もう一方の手でコーヒーを持ちました。冷めにくくするためにホイップクリームを載せたことから、コーヒーにこの呼び名がついたそうです。
持ち手がついた長いグラスに注がれることが多いです。
3)フェアレンゲルターVerlängerter
あまり濃いコーヒーは苦手という方には、こちらがおすすめです。
エスプレッソコーヒーをお湯で薄めた、コーヒーです。
アメリカーノやアメリカンコーヒーと呼ばれているコーヒーのことになります。
4)アイスカフェ Eiskaffee
夏の暑い日には、冷たいコーヒーが飲みたいですよね。
ウィーンにもアイスコーヒーがあります。けれど、ウィーンのアイスコーヒーは、日本のアイスコーヒーとは少し違います。
細長いグラスに注がれたコーヒーの上に、バニラクリームとホイップクリームが載っているのです。日本で言うところの、コーヒーフロートにクリームがかかったような感じです。
クリームとバニラアイスを溶かしながら飲む甘いコーヒーもまた、おいしいのですよ。
クリームまではいらないよ、という方は、クリームは無しで ohne Sahne (without cream)で注文することもできます。

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さて、ウィーンのカフェが特別な場所であることをお話しましたが、ウィーンのカフェではコーヒーだけが飲まれているわけではありません。
紅茶やソフトドリンクのほか、ビールやワインも提供されており、好きなものを楽しむことができるのです。
今回は長くなってしまったので紹介できませんでしたが、カフェには、ザッハトルテの他にも、たくさんのおいしいケーキがショーケースに並んでいます。飲み物と一緒に注文して、甘い幸せなひと時を味わうこともオススメです!

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