英国でも人気の小説『コーヒーが冷めないうちに』を読みました!

ロンドンの書店のフィクションコーナーに、日本の小説の英訳版をよく見かけるようになりました。
はじめは驚きました。どうしてここにこの本が?! と。
それから、どんな小説が並んでいるのかと興味津々で見るようになりました。
そして先日、以前から気になっていた小説『コーヒーが冷めないうちに』”Before the coffee gets cold” を手にすることとなり、読んでみました。
今回は、この本について紹介したいと思います。
1 『コーヒーが冷めないうちに』どんなおはなし?
本の舞台は、カフェ「フニクリ・フニクラ」。
そうです、同じタイトルの歌がありますよね。この本の中でカフェに入っていく人たちも、その歌に聞き覚えがあり、カフェに興味を持った方もいたようです。
地下にあるこのカフェでは、不思議なことが実現できます。
それは、タイムトリップです。
自分が望んだ時間に、戻ることができるのです。
けれど、それを実現させるためには、ややこしいルールがあります。
過去に戻れる席は一つだけ、このカフェで過ごしたあるいっときの過去に限られ、このカフェの席から離れることはできない、そして、過去に戻っても現実は決して変えられないのです。
過去にいられる時間は限られています。特定のコーヒーが注がれてから、”コーヒーが冷めないうちに” すべて飲み干して現実へ戻ってこなければいけません。
このようなことをすべて理解した上で、タイムトリップをする4人のストーリーが描かれています。
恋人とのおはなし、夫と妻のおはなし、姉と妹のおはなし、母と子のおはなし。
過去のある特定の時間に戻って、その場面をもう一度経験できるだけ。
決して現実は変えられないのです。
果たして、本当になにも変わらないのでしょうか。
2 この本を手にしたきっかけ
冒頭でも書きましたが、ロンドンの書店によく日本の小説の英訳版を見かけるようになりました。書店によっては、日本の小説を集めた一角を設けているところもあります。
日本語で読んだことがある本が、こうしてロンドンの書店で英語に翻訳されて並んでいる姿を見ると、勝手ながらうれしい気持ちになるものです。
その中で、特にこの“Before the coffee gets cold”はさまざまなお店で見かけていました。
以前から日本語のこの本の存在は知っていましたが、手にとったことはありませんでした。
先日一時帰国をする際に、ロンドンのヒースロー空港内で本屋さんに入りました。
そこでは、“Buy 1 Get 1 Half price “1冊買ったら2冊目は半額 といううれしい企画が行われていました。普段は圧倒的に日本語の本を読むことが多い私ですが、こういう機会に英語の本を購入してみようとワクワクしながら本を選び、レジへ持っていきました。
すると、2冊目が半額になっていないのです。
「あなたが選んだこの本は、この2冊目半額シールが貼られていないのよ」

ガーン! せっかくウキウキして選んだ本だけれど、このキャンペーンと関係のない本を購入してしまうとはなんだかがっかりと感じた私。では、選び直させてください、と丁重にお詫びをして、再びお店の中へ。
そして、私の目が惹きつけられたのは、この“Before the coffe gets cold”だったのです。

本当は日本語で読みたかったけれど、英語で読んでみるのもよいかもしれない。
そう思って手に取り、レジへ戻りました。
すると、若い女性の店員さんが笑顔で言いました。
「この本、すごくいいわよ」
ロンドンの空港で働いている店員さんにこんなことを言われては、ますます気になってしまいます。
待ちきれない気持ちで飛行機に乗り、さっそく本を開くことになったのです。
3 『コーヒーが冷めないうちに』を読んでみて
この本がどういう内容であるのか、まったく知らずに読みはじめました。
カフェが舞台だとわかると、不思議な力を持つ店員さんがいる、そのカフェに通うお客様の問題が解決する、そのカフェ自体が不思議な場所にあるなど、そういう類のおはなしなのかな、と思いました。
そして、読み進めていくと、タイムトリップができるカフェのおはなしであることがわかりました。
あー、そういうことか。
これまでも、時空を超えて旅をしたり、亡くなった人に会えたりという類のおはなしは読んだことがありました。ありがちなパターンだな、なんてちょっと意地悪な考えもよぎりました。
しかし、私が目で追っている文章は英語で書かれいているのだという、普段なら敬遠してしまいそうな状況を忘れ、どんどん物語にはまり、読み進めたくなっていったのです。
過去へ戻れるということを知って、それを目当てにカフェを訪れたお客さんのお話もありました。けれど、それ以外は、普段からカフェに出入りしているしている人たちが、突如タイムトリップへの道を選ぶことになるおはなしでした。
現実は決して変えられないのに、タイムトリップをするのはなんのためなのか。
現実を変えられなくても、知りたかった真実を探ることはできるのです。
真実を知った登場人物たちは、それからまっすぐに現実と向き合って生きていけるのです。
私たちも日常生活の中で、もしかしたら真実を見過ごしていることがあるのではないのでしょうか。
4 舞台と映画
この小説は、もともと舞台用に作られたおはなしだったそうです。
川口俊和さん自らが脚本と演出を担当され、その舞台公演を見たサンマーク出版の方が感動して川口さんに声をかけ、小説が誕生したのだそうです。
そういえば、この本はカフェの中だけでお話が進んでおり、舞台を作るにはピッタリですよね。でも、本を読んでいると、カフェの中だけではなく、登場人物がさまざまな場面を生きており、それぞれのストーリーが頭の中に浮かびました。
映画もあると知り、さっそく動画配信で見てみました。
さまざまな設定が本とは違っていたことに、少々がっかりしました。
『コーヒーが冷めないうちに』には続編があり、映画はその続編である『この嘘がばれないうちに』のお話も合わせて作られていました。
続編を読んでいなかったので、驚いたこともあり、謎が解けたこともあり・・・
本を読んで思い描いていたカフェとは雰囲気が違いましたが、俳優さんたちが演じる主人公たちの生き生きとした思いが伝わり、温かい気持ちになりました。
はじめに演劇として上演された作品は、杉並演劇祭の演劇大賞を受賞されたとのこと。
その演劇も見てみたかったです。
小説のシリーズは、第6作まで発表されているようです。
まだまだこの世界観を楽しめそうですね。