英国ファンタジー『ハウルの動く城』シリーズ1〜3を読んでみました
『ハウルの動く城』というタイトルはほとんどの方が聞いたことありますよね? そうです、ジブリ映画の名作の一つですね。けれど、この原作が、イギリスのファンタジー小説家ダイアナ・ウィン・ジョーンズによって書かれているということは、あまり知られていないのではないでしょうか。そして、このハウルシリーズは、全部で3作あることも。
英国のファンタジーと言えば、『ハリーポッター』シリーズのみならず、『ナルニア国物語』や『指輪物語』などを夢中で読まれた方もいらっしゃるでしょう。私はこの夏、この『ハウルの動く城』シリーズに出会い、夢中になりました。今回は、こちらの作品を英国ファンタジーの名作の一つとして紹介したいと思います。
1 ハウルの動く城1 魔法使いハウルと火の悪魔
私はこの本を読んだ時、まだジブリ映画を見ていませんでした。映画の告知などで目にする映像から、なんとなく近未来的なストーリーなのかと思っていたのです。しかし、実際は、かわいらしいファンタジー感満載の、ヨーロッパの世界、おとぎの世界がそこにはありました。読んでいると、色彩豊かな明るい場面が広がっていったのです。
長女であることで自由に生きることを諦めていた女の子ソフィは、荒地の魔女により90歳のおばあちゃんの姿に変えられてしまいます。そして、家を出たソフィは動く城にたどり着き、掃除婦としてハウルの家であるその城に住むことになります。
ソフィは本当は18歳の若い女性なのに、最後の最後まで、おばあちゃんの姿のままストーリーが展開されるという設定なのです。それに加えて、女の子が好きなハウル、弟子としてハウルの家に住むしっかり者だけど少し頼りないマイケル、そして、ハウルと取引をしているためにハウルの家の暖炉から離れることができない火の悪魔、カルシファーたちを中心に物語は進んでいきます。早とちりで失敗ばかりしてしまうソフィーですが、そんなところに好感が持てるのです。
荒地の魔女から逃れるべくお城は引っ越しをします。そこには、ハウルがソフィのために用意したお花畑があり、ソフィたちはお花屋さんを開くのです。お花屋さんの店頭に並べるため、マイケルが発明した宙に浮く桶と一緒に毎朝新鮮なお花を摘む場面は、特に私のお気に入りのシーンです。
そして、最後はソフィも元の姿に戻り、ハッピーエンドとなります。
このハウルシリーズ1を読んだ後に、映画をみました。映画の世界では戦争が起きており、なんだか暗い世界が広がっていました。原作ではハウルと荒地の魔女の戦いはあるものの、戦争は起きていません。本と映画の世界観は少し違っていました。
映画との関係などnoteでエッセイを書いたので、よろしかったらこちらも覗いてください。
2 ハウルの動く城2 アブダラと空飛ぶ絨毯
冒頭からシリーズ1では登場しない人物たちが出てきて、話が進んでいきます。あら、ソフィやハウルはもう出てこないのかしら、と少し寂しく思っていると、いつの間にかちゃんと主要人物は登場していたことに気づくのです。この設定の面白さがいいですね。
トルコのバザールのようなところで、絨毯を売るアブダラ。ある日空飛ぶ絨毯を買わされ、夜その上に寝ていると、美しいお庭で目覚め、夜咲花という名のお姫様に出会います。そのお姫様と駆け落ちしようとしたその瞬間、お姫様は魔神にさらわれてしまうのです。お姫様を探し、絨毯に乗って旅をするアブダラは、真夜中という名の母猫と子猫のはねっかえりと出会い、一緒に旅を続けます。夜咲花の居場所を突き止め、乗り込んでいくアブダラ。そこには様々な国の王女たちがいたのです。
アブダラの絨毯屋の隣で揚げ物屋をやっていたジャマールとその飼い犬や、アブダラと一緒に旅をしてくれる兵士などが重要な存在となっており、猫の秘密がまた面白いのです。
最後は見事に美しくまとまり、気持ち良い終わり方で好きです。
3 ハウルの動く城3 チャーメインと魔法の家
本が好きな女の子、チャーメイン。病気で入院する魔法使いのウィリアム大叔父さんの家の留守番をするため、家族と離れて魔法の家へ行くことになります。自由な時間を謳歌しようとしていたところ、大叔父さんの魔法の家に、弟子にしてもらう予定だったと、若者ピーターがやってきます。家事も未熟、さらに恐ろしい生き物の存在を知り、危なっかしい二人なのですが、宿なしという名の子犬や小人たちなどに助けられ、なんとか魔法の家での暮らしていきます。そして、ソフィは王様に送った手紙が受け入れられ、王様の大きな図書室での仕事を手伝うことになるのです。そこでソフィに出会い、なぜか子供の姿になって現れたハウルも一緒に、王宮で起こる悪事の謎を解いていきます。
ウィリアム大叔父さんの魔法の家が迷路のようで面白いのです。食卓を叩いて朝食と言えば、朝食が出てきたりと、所々に出てくるファンタジー要素がとても可愛らしく、ワクワクします。シリーズ2で登場したキャラクターも活躍しているところがまた嬉しいのですよね。
4 3作共通している面白さ
3作とも、物語にファンタジー要素を与えるシンボル的なものが登場しています。1では動く城、2では空飛ぶ絨毯、そして3では魔法の家。魔法使いの上級者でなくても、この3つが主人公にパワーを与えて、ワクワクさせてくれるのです。
また、ソフィが90歳のおばあちゃんになってしまったり、ハウルが子供の姿で登場したり、と姿を変えているところもまた冒険心を掻き立てられます。
そして何より、3作とも最後には登場人物たちみんながきれいに収まり、ハッピーエンドになるところが気持ちが良く、この作品の良さとなっています。
心が躍る英国ファンタジーの世界を体験したい方、是非このダイアナ・ウィン・ジョーンズの『ハウルの動く城』シリーズをご一読ください!