『本日は、お日柄もよく』 言葉のプロフェッショナル 原田マハさん
私は原田マハさんのファンです。
これまで何冊もの本を読み、楽しませてもらいました。
それなのに、なぜこの本をこれまで読んでいなかったのだろうと自分を責めたくなりました。
とてもステキな本に出会いましたので、今日はその原田マハさんの『本日は、お日柄もよく』について書いていきます。
1 『本日は、お日柄もよく』どんなストーリー?
このタイトルの言葉を聞く場所と言えば、そう、結婚式のスピーチですよね。
物語は、トウタカ製菓で働く主人公の二の宮こと葉が、幼馴染 今川厚志の結婚式に出席しているところから始まります。来賓客の退屈なスピーチを聞きながら、睡魔と戦うこと葉の頭はコクリと揺れ始め、ついに、スピーチが始まる前からサーブされていた目の前のスープに、頭からダイブしてしまうのです。
慌てて退席し、トイレで顔を洗い、長椅子に腰掛けて消沈し憂いでいると、1人の女性に出逢います。それが、運命の出会いとなったのです。
その女性は、久遠久美、スピーチのプロでした。
結婚式の後半で、彼女のスピーチにすっかり引き込まれてしまったこと葉は、そこから人生が変わっていきます。
こと葉自身、近々行われる友人の結婚式のスピーチを頼まれており、そのスピーチの原稿を作成するために、スピーチライターの久美の元へ通うようになります。
みごと友人の結婚式でスピーチを成功させたこと葉は、それから突然、創立80周年を迎えるトウタカ製菓の広報戦略室のメンバーに選ばれます。そこでは、もう1人の運命の人物、通称ワダカマが絡んでいました。
久美さん、ワダカマと接するうちに、どんどんスピーチの世界へと踏み込んで行くことになったこと葉は、やがて政治の世界と関わっていくことになるのです。そして、長年続いた政党からの政権交代を目指す大きな選挙が始まるのです。
2 言葉の持つ大きな力
久遠久美の職業はスピーチライターです。
政治家が国会や選挙で答弁や演説をする際のスピーチ原稿を書いていました。
こと葉の幼馴染、厚志君の父親は政治家で、幹事長を務めていました。その厚志君の父親のことを、こと葉も小さな頃からもう1人の父親のように慕っていましたが、病気で亡くなっていました。
告別式の席で、党首小山田次郎が語った弔辞の言葉を、こと葉は覚えていました。
小山田次郎に初めて会った時、こと葉はその言葉をスラスラと口にすることができるのです。
そんなことって、あるでしょうかと思いますが、あるのですよね。
印象に残っている言葉、心を打たれた言葉、人はそれぞれそんな言葉を覚えていることがあると思います。
さらに、久美さんも物語の終盤でこと葉に言葉を伝えます。
それは、久美さんが生涯で最も尊敬していた人の言葉でした。
『困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。
三時間後の君、涙が止まっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。
二日後の君、顔を上げている、三日後の君、歩きだしている』
私はこのセリフ、二度読みしました。
それから、本を読み終わってからもまた読み直しました。
久美さんが生涯で最も尊敬した人、それは、厚志君の父親、政治家の今川幹事長の言葉でした。実は久美さんの父親と厚志君の父親は、親友同士でした。幼い頃に苦境に立たされた久美さんを支えてくれた人は、今川篤朗氏だったのです。
また、ワダカマが唱えた言葉もステキな言葉でした。
”チェンジ CHANGE” という英語のGをちょっと変えるだけで、”チャンス CHANCE”になるのです。
”変わる”ということは、恐れることではなく、”チャンス”ととらえることで、見方はずいぶん明るくなりますよね。
言葉には人を動かす力があります。言葉はご縁もつなぎます。
そのことは、スピーチライターだけが知っていることではないはずです。
言葉を使う私たち一人一人が、この言葉の大きな力を感じながら日々生活しているのではないでしょうか。

3 原田マハさんの作品
冒頭でもお伝えしましたが、私はこれまでも原田マハさんの作品をいくつも読んできました。
モネやゴッホを扱ったアート小説にはとても引き込まれ、この私のサイト内でも記事を公開しております。この2つの記事が、この『ステキをつくる旅』の2大人気記事となっています。
つねづね、原田マハさんには感謝しております
原田マハさんが連れて行ってくれるゴッホの世界ー3作品
原田マハさんが連れて行ってくれるモネの世界ー2作品とジヴェルニー
改めて、原田マハさんの作品について調べてみました。
マハさんは、2006年に『カフーを待ちわびて』でデビューされました。その後、『キネマの神様』『ギフト』などを書かれ、2012年『楽園のカンヴァス』から、圧倒的な面白さが描かれたアート小説を発表していきます。原田マハさんのおかげで知ることができたアート作品は、いったいいくつあったでしょう。
けれど、私は、なぜか、アート作品が世に出る前に誕生していたこの、『本日は、お日柄もよく』を読まずにいたのです。
マハさんの作品は、アート小説だけではないことは知っていました。
『スイート・ホーム』や『さいはての彼女』などにも感銘を受けていたのです。
この作品は、言葉を使って仕事をされている原田マハさんだからこそ生み出せたストーリーなのだと思います。
アートだけではなく、プロフェッショナルはどこの世界にも存在します。
読みながら、勝手に、久遠久美さんと原田マハさんを重ねていたのは、私だけでしょうか・・・
私ごとですが、2月の終わりに一時帰国しました。
ロンドンから羽田へ向かう飛行機の中で、映画『風のマジム』を見ました。
これもまた、若い女性が突然、仕事で大きな夢に挑戦することになるというとてもステキなストーリーでした。
日本で本屋さんに向かった私は、英国に持ち帰る本として真っ先にこの本を手に取りました。
『本日は、お日柄もよく』は、実は今回帰国したら買って帰ろう思っていた本の一つでした。けれど、本屋さんの中で見つけられなかったのです・・・
日本の本屋さんでは、本が出版社ごとに並べられているので、どこの出版社で出された本なのかを知っていないと、見つけられないのですよね・・・
図書館のように、作家さんごとに並べてくれたらどれだけうれしいことか・・・
でも、見つからないとなると余計に気になってしまうもの。
英国に戻ってから、Kindleで購入してデジタルで読みました。
手元にある『風のマジム』は、もう少し後まで取っておこうと思っています。
偶然ですが、『本日は、お日柄もよく』と『風のマジム』は同じ2010年に出版されていることがわかりました。
この2冊を同時に手に取ることになったことは、『いますぐに、まっすぐに』という言葉が今の私に繋いでくれたご縁なのかもしれません。
これからもまた、原田マハさんの本を楽しみにしています!

