10) チャールズ国王(3世) ー 英国王室ドラマ『ザ・クラウン』から学ぶ Season 3

もわりー

2022年73歳で国王となったチャールズ3世。皇太子としての在位期間が世界史上もっとも最長の記録を持つチャールズ皇太子については、『ザ・クラウン』でもざまざまなストーリーが展開されています。

シーズン2の第9話の中で初めて登場するチャールズ皇太子は、フィリップ殿下の母校であるスコットランドのゴードンストン校に通う様子が描かれていました。とても幸せな学校生活とは思えない衝撃的なチャールズの姿が描かれており、その後が気になる展開となりました。そして、シーズン3で再びチャールズ皇太子は主要人物となって登場します。

今回は学生時代のチャールズ皇太子について見ていきましょう。

1 演劇クラブに入っていた

『ザ・クラウン』シーズン3第6話の冒頭では、発声練習をし、メイクをして舞台に上がる人物が登場します。王室とは関係がないように思われるその人物こそ、チャールズ皇太子なのです。

チャールズはスコットランドのゴードンストン校を卒業した後、ケンブリッジのトリニティカレッジへと進みました。そこで、ドライデンソサイエティ (Dryden society)という演劇グループに属していたようです。ドラマのシーズン2で描かれていたチャールズは、繊細で引っ込み思案な少年のイメージがあったので、演劇をやっていたことは意外なことで、強烈に印象に残りました。

実際ケンブリッジ時代のチャールズ皇太子の写真の中には、クラブの仲間達と楽しそうに演劇の練習をする姿が残っています。楽しそうなカレッジライフを送っていた様子に、チャールズ皇太子の意外な一面を垣間見た気がしました。

2 プリンス・オブ・ウェールズ

チャールズ皇太子は、プリンス・オブ・ウェールズと呼ばれていました。この呼び名は、次期王位継承者として国王の長男に与えられる称号です。しかし、なぜこのような呼び名なのでしょう。

少々複雑な歴史になりますが、気になるので少し探ってみました。

そもそも日本語でイギリスと呼んでいるこの国は、正式名称を「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」といいます。このグレートブリテンには、イングランド、スコットランドそしてウェールズが含まれます。イングランドはゲルマン系のアングロ・サクソン人が作った国ですが、スコットランド、ウェールズ、アイルランドはケルト人の国でした。民族も言語も違うこれらの国々の間には、たびたび抗争が勃発していました。

そして、13世紀終わり、エドワード1世の時代イングランドは本格的にウェールズへ侵攻します。そして、ウェールズ国の王は戦死し、イングランドに制圧されてしまいます。その後、ウェールズ人の反抗心を抑えるために、エドワード1世は身重であった王妃エリーナを北ウェールズのカーナーヴォン城で出産させました。ウェールズで生まれたこの王子がウェールズ王国を継ぐのだと宣言し、ウェールズの人々の同調を煽ったと言われています。

その時、次期国王として呼ばれた称号が「プリンス・オブ・ウェールズ」であり、それ以来この称号が今でも引き継がれているのです。ちなみに、このプリンスとは王子という意味ではなく、君主・大公の意味として使われています。

エリザベス女王の長男であるチャールズは、1969年20歳の時にウェールズのカーナーヴォン城で行われた叙位式典で、正式にプリンス・オブ・ウェールズとなりました。

この時の話が、第6話で描かれています。

3 ウェールズの大学に留学

ウェールズには今でも独自の言語、ウェールズ語が存在しており、英語と並んで公用語となっています。このウェールズ語は、英語とは全く異なる言語であり、イングランドで生活をしている人たちには解せない言語なのです。

チャールズのプリンス・オブ・ウェールズ叙位式典を前に、当時のウィルソン首相は、ウェールズからの反感を抑えるためにも、チャールズがウェールズ語で挨拶をすることを企てました。そして、チャールズはケンブリッジ大学の2年目、1学期間をウェールズの大学へ留学し、ウェールズ語を学ぶことになったのです。

ウェールズの大学でチャールズの先生として任命されたのは、ナショナリズムを支持し王室反対派であったミルウォード教授でした。ドラマの中では、チャールズがウェールズの大学に到着した際も歓迎されている様子はなく、在学中も友達もいませんでした。実際、イングランド出身のチャールズがプリンス・オブ・ウェールズになることに反発し、チャールズが大学へ通う間デモが絶えなかったそうです。

ミルウォード教授は、チャールズを王室の人間として特別扱いすることはなく、厳しく指導しました。しかしある日、友人もいないチャールズがたった1人で夕食を食べるという話を聞いて、自宅に招待してしまいます。同じナショナリズムの考え方を持つ妻も、はじめはチャールズの訪問に不快感を示していましたが、チャールズの人柄に触れて打ち解けていき、ウェールズについて話をし、友好を深めます。そうして、チャールズ自身もウェールズにはウェールズ独自の文化があり、独自の考えがあるということを感じるようになるのです。

ドラマの中ではそれから、叙任式の際に用意されたスピーチに加えて、彼独自の言葉でウェールズに対する気持ちを発表するチャールズの姿が描かれます。

ロンドンに戻ったチャールズはしかし、エリザベス女王から冷遇されてしまいます。女王は、チャールズ独自の気持ちを表すスピーチなど必要なかったと思っていたのです。

ドラマの中のスピーチと実際のスピーチが全く同じだったわけではありませんが、その時のチャールズのスピーチは、ウェールズのナショナリズムの考え方に影響を受けたものであったという評価はあったようです。

このミルウォード教授は、2020年4月89歳で亡くなりました。チャールズ皇太子はその際、彼がチャールズにウェールズ語を教えてくれたことへの深い感謝の気持ちと共に追悼の念を述べています。

***

ドラマのシーズン3第8話では、いよいよカミラが登場します。当時アンドリューと交際していたカミラと知り合ったチャールズは、すぐに彼女に好意を抱くようになるのです。がしかし、2人の間には王室内部からの壁が立ちはだかるのです。

そして、2人の関係はシーズン4へと続いていきます。

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もわりー
日本→ウィーン15年→現在ロンドン在住です。
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