7) マーガレット王女 2 ー 英国王室ドラマ『ザ・クラウン』から学ぶ Season 2 & 3

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もわりー

エリザベス女王の妹、マーガレット女王。『ザ・クラウン』を通して描かれる姉妹の関係は大変興味深いものです。

『ザ・クラウン』シーズン1では、1955年タウンゼント大佐とお別れをしたマーガレット王女が描かれて終わりました。

3) マーガレット王女 1 ー 英国王室ドラマ『ザ・クラウン』から学ぶ Season 1

その後、マーガレット王女は公務に励み、甥・姪の面倒を見るエリザベスの良き妹としての生活を送りました。そして、それからまた新しい男性と巡り会うこととなるのです。

1 写真家 アンソニーとの結婚

『ザ・クラウン』シーズン2 第4話では、マーガレット王女は友人に誘われたパーティーで、写真家のアンソニー・アームストロング=ジョーンズと出会います。アンソニーに興味を抱いたマーガレットは、マーガレット自身の写真撮影を依頼することで親交が始まります。アンソニーの愛称はトニー。そして、彼の女性関係・友人関係などは、王室とはかけ離れたかなり派手なものだったのです。しかし、自由奔放で溌剌としたマーガレットにはそこが魅力的に映ったようです。

実際写真家として活躍していたトニーは、王室関連の写真撮影を依頼されることもあったようです。そして、マーガレット王女の29歳誕生日記念の公式写真も、トニーが撮影しています。

そして第7話で、マーガレットはベルギーにいるタウンゼントから、別の女性との結婚報告の手紙をもらいます。傷心と報復心にかられたマーガレットは、トニーとの結婚を決めるのです。トニーの方は、マーガレットを本当に愛していたのかわからないような派手な生活を続けていましたが、王女と結婚することで、実母にとって自慢の息子になりたいという野心が描かれていました。

マーガレットの結婚は、エリザベスの第3子アンドリュー王子の誕生後に公式に発表され、1960年5月にウェストミンスター寺院で結婚式が行われました。そして、トニーは爵位のない平民でしたが、”スノードン伯爵”の称号が与えられ、マーガレットはスノードン伯爵夫人となったのです。

マーガレット王女のその後の話は、シーズン3へと続きます。

2 アンソニーとの不仲・離婚

マーガレットとトニーは、男女2人の子供に恵まれました。しかし、トニーの浮気が絶えず、2人の間には不仲説が流れていました。トニー自身はカメラマンとしての名声を築き、マーガレットは公務を行い、家の中の改築なども取り仕切っていました。そんな中で、2人の生活にすれ違いが生じ、トニーの愛情はマーガレットから離れていったように描かれています。

『ザ・クラウン』シーズン3 第2話では、トニーの仕事に同行してマーガレットもアメリカへ出向くことになります。そして、英国への財政援助の件で難色を示していたアメリカのジョンソン大統領の元を公務として訪問します。英国王室にクールな態度を示していたジョンソン大統領でしたが、マーガレット王女独特の気取らない奔放さが気に入られ、見事外交交渉に成功するというシーンが描かれています。

そして、シーズン3 第10話ではついにマーガレット王女とトニーの結婚生活の破綻が描かれます。

40代になったマーガレットはトニーの不倫に苦しんでいます。しかし王室の家族の中ではトニーに対して好意的な発言が飛び交い、マーガレットは心を痛めます。そして、友人に招かれたパーティーで、17歳年下の庭師のロディと出会います。ロディと親密になったマーガレットは、パーティーなどに頻繁に出かけ、派手な生活を送るようになります。やがてロディとの関係はマスコミにも報道され、そのことが原因でトニーとも大喧嘩を繰り広げることとなります。マーガレットとトニーの喧嘩を目の当たりにしたロディは、マーガレットの元を逃げるように去っていきます。そして、1978年ついにマーガレットとアンソニーは離婚することになるのです。英国王室内血縁の離婚は、ヘンリー8世以来のこととなり、ドラマの中でもマーガレットがエリザベスにそのことを謝るシーンがあります。

この第10話の中で個人的にとても印象に残った場面がありました。

トニーと大喧嘩をし、ロディもマーガレットのそばからいなくなった後、マーガレットは自殺を図ったかのように大量の鎮静剤を摂取するのです。そして無事に目を覚まし、絶望しているマーガレットを訪れたエリザベスは言いました。エリザベスにとってマーガレットはもっとも身近で大切な存在、もし自分がいない世界がどんなものか体験させたくてこんなことをしたのであれば、その意図はマーガレットの思い通りだった、私は耐えられない、と涙を流します。そんな姉を見たマーガレットは、再びエリザベスと一緒にしっかり生きていこうと思い直すのです。

3 エリザベスとマーガレット

Netflix英国版に、エリザベスとマーガレットの関係について、王室に近い関係者が語るドキュメンタリーがあります。“Elisabeth and Margaret : Love and Loyalty”.

ここで語られるエリザベスとマーガレット姉妹の関係を見て、まず確かだと思われたことは、エリザベスとマーガレットは大変仲の良い姉妹であり、どんなことがあっても2人の絆が失われることはなかったということです。

エリザベスとマーガレットの父親、ジョージ6世は次男であり、本来王位を継ぐことを想定していませんでした。そして、エリザベスもまた幼少の頃は女王となるべく立場にはいませんでした。エリザベスとマーガレットは、普通の家庭に育つ4歳違いの姉妹と同様に、隔てなく自由に一緒に生活し、友人のように気持ちを分かち合い、相談できる唯一の間柄であったのです。マーガレットの方が子供の頃から活発で、家族の場を明るくする存在であったそうです。しかし、伯父であるエドワード8世が、離婚歴のある女性との結婚を選び退位を決意してから、彼女たちの人生は大きく変わってしまいました。

エリザベスは後に女王となる存在として、マーガレットとは異なる教育を受け、エリザベスだけが特別な存在として扱われるようになったのです。それでも、エリザベスはいつでもマーガレットの存在を大切にし、そばに寄り添ってきました。戦時中に14歳のエリザベスがBBCのラジオでスピーチを行った際も、マーガレットがそばにいる状況で行い、最後はマーガレットも一言述べて2人からの気持ちとしての言葉が送られたのです。

その後、エリザベスにフィリップが現れた時も、マーガレットを伴って3人で会うことが多かったそうです。

それから、エリザベスは結婚、さらには最愛の父親ジョージ6世を失いエリザベスが女王に即位すると、マーガレットにとって、姉であり友人であり唯一の相談相手であったエリザベスが遠い存在となってしまったのです。ジョージ6世にとってもマーガレットは大切な可愛い娘でした。エリザベスは誇り、マーガレットは喜び、ジョージ6世はそう言っていたそうです。父親の死により、マーガレットは深い悲しみを味わうことになるのですが、唯一の話し相手であった姉もまた遠くへ行ってしまい、寂しい生活を送ることになったそうです。

エリザベスとマーガレットは、王室内で現代のように教育を受けることができなかった最後の世代でした。もしマーガレットが現代のように進学して教育を受けることができていれば、王室以外の世界との繋がりができて、生活もだいぶ違うものになっていたでしょう。

『ザ・クラウン』の中ではまだ描かれていませんが、マーガレットは2002年71歳でこの世を去ります。マーガレットの葬儀の際、これまで人前で涙を見せたことのなかったエリザベス女王でしたが、初めて涙を拭う姿をカメラが捉えたそうです。私自身、二人姉妹の妹として育ちましたので、エリザベスとマーガレット2人の背景を思うと、2人の絆をとても愛おしく感じずにはいられません。

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もわりー
もわりー
日本→ウィーン15年→現在ロンドン在住です。
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